鶴見駅4番線ホームの壁時計
金ジョンス
今日もありがとうの気持ちを刻みながら
時計は回っている
吹きすさぶ雪や雨に打たれながらも
50年を一日の如く回り続けている
関東大震災
朝鮮人虐殺の生き地獄の中で
救いの手を差し伸べてくれた日本の方々
その恩情を刻みながら
埠頭工事現場に引きずられ
荒仕事に疲れ果てた手を握り温め
干し菜葉の汁を炊きだしてくれた
その人情も刻みながら
「皆さま お元気で-
朝鮮民主主義人民共和国
鶴見地域 帰国者一同 1959年」
この時計、このプレートを外せと
脅し吠える声にも揺るぐことなく
その感謝の日々を刻々と刻みながら
今日も時計は回っている
勤め帰り、私が手にした夕刊には
またしても「制裁」の大きな活字
鶴見駅4番線ホームに
電車が入る
1959年から84年まで
日朝両政府の了解のもと、
日本赤十字社と
朝鮮赤十字会が実務を担い
自民から共産まですべての政党や
自治体、マスコミも後押し
結果的に
在日朝鮮人を騙す取り組みだった
北朝鮮帰還事業が行われます。
その時に
差別もない貧困もない
地上の楽園を夢見て
新潟から船に乗った
在日朝鮮人の人達から
送られた時計が
鶴見駅の
鶴見線ホームにあります。