ヒロシマ

「お水をちょうだい」と叫ぶ女の子に
青く硬いトマトを一つ手渡した。

唇は白くむくれ、
ただれて開きそうもなかった。

手は両方ともくっついていた。

なぜあのトマトを
半分にちぎって渡さなかったのか。

あの女の子は
どうやってあの手とあの唇で
あの硬いトマトの汁を
吸うことができただろうか。


広島平和記念資料館編集 

「原爆の絵」第3章より